新型コロナウイルスが未だ猛威を振るうこの夏、残念ながら私たちの音楽祭を開催することはできません。
音楽祭が閉幕するとき、私たちは当たり前のように「See you next year!」「また来年お会いしましょう!」と言ってきました。まさか翌年の音楽祭がないなんてことは、考えもせずに。
思いがけずぽっかりと空いてしまった今年の夏、毎年の音楽祭を楽しみにしてくださっている皆さまと音楽を共有することが何かできないかと、考えました。
私たちの音楽祭には、これまでの40年にたくさんの演奏家が来草し、素晴らしい演奏やレッスンを数多く、それこそ無数に残してくださっています。
これらの音は、練習室を通り抜ける爽やかな風、天狗山を気持ちよさそうに飛ぶトンボの群れ、落葉松の隙間から射す木漏れ日、紅く色づき始めるナナカマドの実、硫黄のにおいを湛えた温泉の湯気、コンサートが終わった後の黄昏の空…こういった草津の情景とともに皆様の記憶に深く刻まれていることと思います。40年にわたって積み重ねられてきたこれらの音楽の営みを様々な形でお届けしたいと思います。
「Eine Pause 2020」―お休みの2020年がこの音楽祭の歴史の中で特別な一年となりますように。