草津アカデミーでは、毎年テーマを決め、そのテーマに沿って学習し、コンサートのプログラムを構成しています。
第43回(2023年)のテーマ:プラハとウィーン 二つの楽都ードヴォルジャークとブラームス

今年の音楽祭とテーマについて
プラハのヴルタヴァ川(モルダウ)に架かるカレル橋で、ドヴォルジャークとブラームスが出会うという設定が今年の音楽祭のテーマです。メーリケの名著『プラハへの旅路のモーツァルト』によると、当時の馬車の旅だと、ウィーンからプラハまでは丸3日かかったようです。距離としては300㎞ほどで、今日では3時間の列車の旅。ドヴォルジャークとブラームスの二人が実際に会ったのは、1878年の暮れにドヴォルジャークがウィーンのブラームスの自宅を訪れたのが初めてでしたが、それ以前からブラームスはドヴォルジャークの若い才能を認めていて、オーストリアの国家奨学金に応募された彼の作品に賞を出すよう計らいました。そしてベルリンの出版社ジムロックに推薦して、後の楽譜を出版するように強く勧めています。
ウィーンとプラハは古くから音楽家の交流が盛んで、フランティシェク・トゥーマ(1704 ~74)やレオポルト・コジェルフ(1747~1818)、フランツ・クロンマー(1759~1831)、アダルベルト・ギロヴェッツ(1763~1850)、イグナーツ・モシェレス(1794~1870)らは、ウィーンとプラハの両都市で活躍しました。
モーツァルトは晩年、度々プラハを訪れていて、1781年1月に妻のコンスタンツェを伴って訪れた時は、すでに「フィガロの結婚」がプラハで人気を博していて、その後にプラハで初演するべく「ドン・ジョヴァンニ」をこの地のために作曲しています。
ボヘミヤ貴族として有名なロプコヴィッツ一族、中でもヨーゼフ・フランツ・マクシミリアン・ロプコヴィッツ候は、ヨーゼフ・ハイドンの弟子で作曲家であったアントン・ヴラニツキー(1761~1820)に作品を書かせ、自分の持っているオーケストラに演奏させました。特にベートーヴェンには年金を与えるなど、最大の支持者のひとりで、ベートーヴェンは交響曲第3番「英雄」や第5番「運命」第6番「田園をはすべてロプコヴィッツ候に献呈しています。
このような背景から18世紀から19世紀にかけて二つの楽都で生まれた音楽文化の出会いと交流、そして人間関係を当時の作品を通して辿る2週間の旅を皆様どうぞお楽しみください。
これまでのテーマのご紹介
第1回(1980年):ヨハン・セバスティアン・バッハの音楽
第2回(1981年):ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトの音楽
第3回(1982年):ブラームスとバッハの音楽
第4回(1983年):シューベルトの音楽
第5回(1984年):フランツ・ヨゼフ・ハイドンの音楽
第6回(1985年):J.S.バッハと息子たち
第7回(1986年):R.シューマンの音楽
第8回(1987年):モーツァルトとマンハイム楽派の音楽
第9回(1988年):フランス音楽(ベルリオーズ、ドビュッシー、ラヴェル)
第10回(1989年):ベートーヴェンの音楽
第11回(1990年):1790年をめぐって―古典派からロマン派へ
第12回(1991年):1830年―ロマン派音楽の胎動
第13回(1992年):1750年―バロックからクラシックへ
第14回(1993年):二つの世紀末
第15回(1994年):シューベルトとその時代
第16回(1995年):ウィーン古典派への道 モーツァルト・ハイドン
第17回(1996年):ワーグナーとブラームスの時代
第18回(1997年):バッハと現代
第19回(1998年):ベート―ヴェンの時代
第20回(1999年):古典と現代
第21回(2000年):バッハとロマン派音楽
第22回(2001年):モーツァルトの旅
第23回(2002年):音楽都市パリとウィーン
第24回(2003年):ロマン主義の流れ
第25回(2004年):バッハからベートーヴェンへ
第26回(2005年):ドイツの都市と音楽
第27回(2006年):モーツァルトと18世紀
第28回(2007年):ベートーヴェンからブラームスへ
第29回(2008年):18世紀の音楽 バロックからクラシックへ
第30回(2009年):1809年 ハイドン没後・メンデルスゾーン生誕200年
第31回(2010年):シューマン、ショパンとビーダーマイヤーの時代
第32回(2011年): 「未来の王国に」フランツ・リストとロマン主義音楽
第33回(2012年):生誕150周年 C.ドビュッシーとW.A.モーツァルト
第34回(2013年):リヒャルト・ワーグナー生誕200年~わたしはどこから来たのか~
第35回(2014年):リヒャルト・シュトラウス生誕150周年~ミュンヒェン、ウィーン、ドレスデン
第36回(2015年):1815年ウィーン、ビーダーマイヤー時代、1915年ドビュッシーと20世紀の音楽
第37回(2016年):イタリアから、イタリアへ
第38回(2017年):モーツァルトの奇蹟
第39回(2018年):自然が創造する音楽
第40回(2019年):バッハからシューベルトへ
第41回(2021年):ベートーヴェンから現代へ
第42回(2022年):ロッシーニ生誕230年~その時代のヨーロッパ
第43回(2023年):プラハとウィーン 二つの楽都ードヴォルジャークとブラームス