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草津夏期国際音楽アカデミー&フェスティヴァル

STAFF BLOG

2017 コンサートの聴きどころ・後編

大好評の企画委員・大木正純氏によるコンサート解説の後編です。

コンサートの聴きどころ(後編)

文 大木正純(草津アカデミー企画委員)

8月24日(木)木管アンサンブルの夕べ

管楽アンサンブル特有のいきいきした呼吸がたっぷりと楽しめる一夕。偽作の疑いをかけられながらめげずに稀に取り上げられるディヴェルティメント変ホ長調(伝モーツァルト)をはじめ、ミヒャエル・ハイドンの同種の作品、いちだんと珍しいフンメルのオーボエ小協奏曲など、ほかではめったに聴けない作品がずらりと並びました。「ナハトムジーク(夜の音楽=セレナード)」の名で知られるハ短調のセレナードは反対によく知られた作品ですが、これは本来、気晴らしのために存在するはずのセレナードなのになぜか短調の暗い音調が響く不思議な作品でもあります。いかにもモーツァルトらしい謎に包まれた、しかし逸品です。そのほかさらに、モーツァルトのホルン協奏曲第1番を、オーケストラのパートを弦楽五重奏に縮小した室内楽ヴァージョンで演奏します。

8月25日(金)モーツァルトとミヒャエル・ハイドンの音楽

ミヒャエル・ハイドン(1737~1806)とは言うまでもなくあの大ハイドンの5歳違いの弟。後半生をザルツブルク宮廷楽団のコンサートマスターあるいは大聖堂のオルガニストなどとして過ごしたことからモーツァルトとは昵懇の間柄で、二人は歳の隔たりを超え、深い友情で結ばれた形跡があります。中でもハイドンが大司教の命令でヴァイオリンとヴィオラの二重奏曲ツィクルスを作曲中に病気で倒れた際、モーツァルトが一部を代わりに書いて急場を凌いだ話はたいへんに有名。このコンサートで演奏されるハイドンとモーツァルトのソナタと二重奏曲こそ、まさにその友情の記念碑にほかなりません。そのほかミヒャエル・ハイドンの弦楽五重奏曲、モーツァルト最後のピアノ三重奏曲である第6番ト長調、さらにヴァイオリン・ソナタの最高傑作とも言うべき哀しくも美しいホ短調K.304など、この日もメニューはまことに盛り沢山です。

8月26日(土)モーツァルトの予約演奏会の再現&尹伊桑生誕100年

コンサートの内容は二本立て。まず20世紀最大の作曲家のひとり尹伊桑(ユン・イサン、1917~1995)の生誕100年に因んで、彼の作品が3曲、取り上げられる予定です。3回目の死刑求刑と相前後して書かれた力作、フルート、オーボエ、ヴァイオリンとチェロのための「イマージュ」(1968)そのほかを通じて、尹の偉大な業績を偲びます。
それらに挟まれる形で演奏されるのは、モーツァルトの美しいピアノ協奏曲2曲。クラヴィーア(ピアノ)の名手としてウィーンに乗り込んだモーツァルトの、いわゆる予約演奏会が好評を博した時期の作で、とりわけハ長調K.415のブルク劇場におけるコンサートは大喝采を浴びた模様です。なお今回は、2曲とも弦楽五重奏伴奏の室内楽版で演奏されますが、そもそもイ長調K.414の方は、管楽器抜きのケースを考慮した上で書かれた作品でした。

8月27日(日)カール=ハインツ・シュッツ フルート・リサイタル

今は亡きヴォルフガング・シュルツの後釜として急速に名声を上げ、いまや押しも押されぬ大スターとなったウィーン・フィル、フルート・セクションの顔カール=ハインツ・シュッツ。彼を主役とするこのコンサートは、主だったところでもモーツァルトのフルート四重奏曲2曲のほか、シューベルトの超人気作「アルペッジョーネ・ソナタ」のフルート・ヴァージョン、さらにメシアンや武満徹の20世紀作品など、色とりどりの作品を豪勢に取り上げます。早い段階でのチケット売り切れが心配される所以です。

8月28日(月)モーツァルトの室内楽曲、その多彩な響き

ベートーヴェンの同編成の作品とともにピアノと管4本のアンサンブルのための歴史的傑作のひとつ、五重奏曲変ホ長調のほか、あの交響曲第40番ト短調のほんの数日前に書かれたピアノ三重奏曲第5番ハ長調、さらに何とペーター・シューベルトの父フランツ・テオドール・シューベルトが「プラハ交響曲」をもとにアレンジしたというレアもの弦楽五重奏曲ニ長調などを通じて、モーツァルトの室内楽作品の奥深い魅力を探ります。名手競演の魅力も満点。そのほか、気心知れ合ったパオロ・フランチェスキーニ、トーマス・インデアミューレ、クラウディオ・ブリツィによるヴィヴァルディのヴァイオリン、オーボエとオルガンのためのソナタ(ハ長調 RV 779)が取り上げられる予定。

8月29日(火)タマーシュ・ヴァルガ すばらしきチェロの世界

ウィーン・フィルの首席奏者で、草津アカデミー&音楽祭の内部では“王子様”と呼ぶ女性も少なくない人気者、タマーシュ・ヴァルガの朗々たるチェロが、聴衆を魅了するに違いない一夕。名曲中の名曲、シューベルトの「アルペッジョーネ・ソナタ」に対して、モーツァルトの大先輩に当たるヴァーゲンザイルのソナタの、それも4梃のチェロ用のヴァージョンとは、いったいどのような秘曲なのでしょうか? ほかにもベルンハルト・ハインリヒ・ロンベルク(1767~1841)の“モーツァルトの主題による変奏曲”とか、モーツァルトの弟子でもあり友人でもあったアントン・エーベルルの三重奏曲など、おそらく一生に一度しか聴けないような曲がずらりとプログラムに並んでいます。

8月30日(水)ハウスコンサートで演奏された晩年のモーツァルト作品

今年のコンサート・シリーズは、テーマ作曲家モーツァルトの、晩年の作品を中心にしたこの日のプログラムで締めくくられます。インパクト強烈な名作、ピアノ協奏曲第20番ニ短調の、“編曲者不明”の室内楽版! フンメル編曲の、交響曲第41番「ジュピター」の、これまたフルート、ヴァイオリン、チェロ、ピアノ用ヴァージョン! どちらも何という大胆な選曲でしょうか。もちろん、往時は交響曲や協奏曲などを、適宜、楽器編成を縮小した形で演奏することは、ごく普通に行われていたわけですが……。一方、弦楽五重奏曲変ホ長調は死の年の4月の作で、これがモーツァルトが書いた最後の室内楽曲となりました。

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