音楽祭スタッフによるコンサートピックアップ 8/29(mon)
チャイコフスキー「フィレンツェの思い出」がコンサートのメイン曲らしく華やかに演奏されました。曲そのものがギュッギュッとフルーツてんこ盛りの甘~いタルトのような聴きごたえがあるのですが。
チャイコフスキーの室内楽はとにかく音符が多いし騒々しいイメージをお持ちの方が多いかと思います。でも、意外と単純な伴奏が淡々と長々続くところもありまして、プレイヤーからするとオイシイ旋律vs退屈な伴奏、といった役割分担が生じることもしばしば。たとえば、1楽章の第2主題や、2楽章の1stヴァイオリンと1stチェロのデュエットの伴奏などがそれ。西野さん(vn)とベッチャーさん(vc)のデュエットが特に素晴らしかった!
むしろ本日の1曲目に演奏された「アンダンテ・カンタービレ」のように全体がしっとりとして音数も少なく薄い音楽は珍しいほう。こちらは名門パノハ弦楽四重奏団の演奏でして、その暖かい音色に癒されました。
ところで、「フィレンツェの思い出」は弦楽合奏版で演奏されることも多いのですが、今日聞いた六重奏によるオリジナルの演奏の方が個々のパートがはっきり聞こえるので、ディテールが分かるぶん立体的に聞こえ、この曲の面白さが十分に伝わったのではないでしょうか。終楽章の迫力は弦楽合奏のほうがもちろん効果的ありますが、各楽章の緻密に書かれているアンサンブルを楽しむには六重奏のほうがよいと感じました。
ちなみに、チェロのベッチャ―先生は、インタビューをしていた時に、今回の音楽祭のなかで演奏するのが最も楽しみにしている曲だとおっしゃっていました。(MY)