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草津夏期国際音楽アカデミー&フェスティヴァル

STAFF BLOG

ここに注目! コンサートの聴きどころ ~ 企画委員の部屋から

今年のキーワードはずばり“イタリア”。フェスティヴァルのプログラムに組まれる曲目も、当然、イタリア色が濃厚です。もちろんイタリア音楽のオン・パレードというわけではありません。イタリアから、どこか別の土地に移って活躍した人たちの仕事ぶり、あるいは逆に、ほかの国からイタリアを訪れた人々のさまざまな成果にも目を向ける価値があるでしょう。時代もバロックから現代までを広くカヴァー。そのヴァラエティ豊かなラインナップを、草津に集まる超一流のアーティストたちの総力を結集してお届けします。どうぞ心ゆくまでお楽しみください。

以下、日を追って、各プログラムの聴きどころを、かいつまんでご紹介したいと思います。

 

8月17日(水)オープニング・コンサート/M.トルコヴィッチ・C.ヒンターフーバー 群馬交響楽団

ドイツや北欧、あるいはロシアの作曲家たちにとって、南国イタリアの明るく開放的な空気はいつも憧れの的です。メンデルスゾーン(ハンブルク生まれのベルリン育ち)も若いころのイタリア旅行に、どれほど胸をときめかせたことでしょうか。オープニングコンサートのメインには、旅の感動をそのままスコアにしたかのような名曲中の名曲、交響曲第4番「イタリア」が置かれています。映画音楽の巨匠として有名ですがクラシックの領域でも優れた仕事をしているニーノ・ロータの珍しいピアノ協奏曲(日本初演!)と、こちらは打って変わっておなじみのポピュラー名曲「ウィリアム・テル」序曲とともにお楽しみください。

 

8月18日(木)クリストファー・ヒンターフーバー ピアノ・リサイタル

草津アカデミーの講師に初めて招かれたのはほんの3年前。にもかかわらず持ち前の爽やかなキャラクターでたちまち人々の心を掴み、いまや八面六臂の活躍を強いられる(?)常連メンバーと化したウィーンのピアニスト、クリストファー・ヒンターフーバーのソロ・リサイタル。バッハからベリオまで年代的にも幅広く、また今年のテーマにぴったりの「ヴェネツィアとナポリ」や、絢爛たる技巧がきらめく「フィガロの結婚」の主題によるファンタジーなどを含む、多彩なプログラムが組まれています。

 

8月19日(金)多彩なイタリアの音楽/ブゾーニ:ヴァイオリン・ソナタ

主にドイツで活躍したものの血統的にはイタリア系の作曲家であるフェルッチョ・ブゾーニがこの日の主役のひとり。難曲ヴァイオリン・ソナタ第2番の、ずっしりとした手応えにご期待ください。ペルゴレージやカゼッラの珍しい作品が並ぶ最後に、比較的良く知られたロッシーニの四重奏曲が置かれています。今回演奏されるのは管楽用ヴァージョンですが、もともとの形は弦楽用で、それは何と12歳のロッシーニの手になるものでした。「その昔、このひどいソナタを聴くに堪えない音で演奏した」と述懐するロッシーニですが、どうしてどうして。むしろ早熟の天才ぶりに改めて驚かされること請け合いです。

 

8月20日(土)ヴィヴァルディ/四季・イタリアンコンチェルト

イタリアのバロック音楽と言えば何はともあれ「四季」。それをイ・ムジチ合奏団のLPレコードで聴く、というのが日本の音楽ファンの、ヴィヴァルディ受容の第一歩でした。いや、いまなおこの曲の人気は絶大なようで、この日のチケットは完売(7月15日現在)とか。敬愛すべき名手、パオロ・フランチェスキーニとその仲間たちが、得意の領域を楽しませてくれるはずです。2曲の管楽器用協奏曲もヴィヴァルディならではの傑作。そのほかオープニング・コンサートに続いて、再びニーノ・ロータの作品が取り上げられます。

 

8月21日(日)合唱とオーケストラ/ヴェルディ:レクイエム

今年の“合唱とオーケストラ”のターゲットは、驚くなかれヴェルディの「レクイエム」。“えっ、こともあろうにあの「ヴェルレク」を!”と、びっくりなさるのではないでしょうか。たとえは悪いかも知れませんが、草津のステージで「アイーダ」を上演するようなものですものね。しかしこの裏には、井阪事務局長が例によってどこかで無理やり(笑)みつけてきた隠し球があります。こう書いている私もよくは存じませんので、これは当日になってのお楽しみ。開けてびっくり玉手箱、ということにいたしましょう。

 

8月22日(月)ブラームスのイタリア

必ずしも外国旅行が大好きというわけではなかったブラームスが、幾度もイタリアの地を踏んでいるとはやや意外な気がしなくもありません。ただ、この日のプログラムに組まれた作品たちが、ではイタリアとどういう直接の関係があるのだと聞かれたら、私は返答に窮するというのが正直なところです。でもまあ、いいじゃないですか(笑)。ブラームスの室内楽曲の中でも指折りの傑作ばかりを3曲も、これだけのメンバーで聴ける機会など、またとあるものではないのですから。

 

8月23日(火)ジェンマ・ベルタニョッリ ソプラノ・リサイタル

いまやアカデミー&フェスティヴァル声楽部門の顔(それも“美しき顔”ですね)とも言うべき存在となったソプラノのジェンマ・ベルタニョッリ。今年はオペラ作曲家として知られるヴォルフ=フェラーリやロッシーニ、あるいはあのローマ三部作で有名なレスピーギらの「歌曲」を ―― ブルーノ・カニーノによるこれも珍しいピアノ小品の数々を間に挟みながら ―― たっぷりと聴かせてくれます。え、オペラのアリアも聴きたかった、ですって? いやご心配なく。最後に得意中の得意、ヘンデルのアリアが2曲、ちゃんと用意されています。

 

8月24日(水)管楽アンサンブル/ドヴォルジャーク:管楽セレナード

毎年必ず1回開かれる、寛いだ管楽アンサンブルのコンサート。世界から第一級の名手たちが集まる草津だけに、その充実感と楽しさはまた格別です。前半は20世紀イタリアの作曲家ジャチント・シェルシのあとに、ジョスカン、パレストリーナ、フレスコバルディ、ジョヴァンニ・ガブリエリといった、いにしえの大家たちが並びました。さらに次にも注目。サリエリというとなぜか負のイメージがつきまといがち(笑)ですが、今回取りあげる曲はおそらくフリーメーソンに関わりがあると思われる、短いが美しい音楽なのでお聞き逃しなく。後半は古典~ロマン派の堂々たる作品。中でもドヴォルジャークのセレナードは、この種の音楽の中でも飛び抜けてチャーミングな、名曲中の名曲です。

 

8月25日(木)イタリアとうた

声楽を主体にした前半は、イタリア・オペラの大家であるロッシーニ、ベッリーニ、ヴェルディ、プッチーニ、レオンカヴァッロの色とりどりの作品に、“歌の国イタリア”にさまざまな想いを抱くドイツ語圏の大家たちのこれまた種々の作品を組み合わせた、まことにもって盛りだくさんな内容。打って変わって後半は純然たる室内楽のひとときです。イタリアからスペインに移って活躍したボッケリーニの、十八番の弦楽五重奏曲と、ウィーンから憧れのイタリアに思いを馳せる、ヴォルフの弦楽四重奏用の小品。

 

8月26日(金)イタリアのモーツァルト

モーツァルトにとってイタリアは、精神的・音楽的に急成長する多感な少年時代に何度も長逗留した、ほとんど第二の故郷のようなもの。このコンサートで取り上げられる彼の6曲は、意図的か偶然か、すべて2度目のイタリア旅行を終えてから次にミラノに滞在するまでのほぼ1年間に書かれたものばかりです。ときにモーツァルトは16歳! ディヴェルティメントK.136や「アレルヤ」はあまりにも有名ですが、「ミラノ四重奏曲」と呼ばれるグループに属する2曲なども、何と見事な珠玉の作品であることでしょう。パノハ四重奏団の名演奏に期待が高まる所以です。そのほかモーツァルトとほぼ同時代の大家でライヴァルとも目されたクレメンティの作品2曲も取り上げられます。

 

8月27日(土)イタリアとオーストリア/矢代秋雄 没後40年

交響曲や協奏曲、ソナタといった古典的スタイルの本格的な音楽を中心に作曲活動を展開した矢代秋雄(1929~1976)が40歳代で早世してからはや40年。その2曲にわれらが音楽監督の1曲を加えた日本人作品から、ポルポラ、ブゾーニ、ベリオといった18~20世紀のイタリア作品、さらにはフランスの作曲家ジャン=バティスト・アルバン(アーバン)のイタリアに関わりのある曲まで、バラエティ豊かな1日。ヨハン・シュトラウス2世による2曲のワルツは、決してテキトーに選んだものではありません。「南国のばら」はイタリア国王に献呈された曲、一方「シトロンの花咲くところ」はイタリア旅行の際にミラノで初演されたものという、どちらも立派な選曲理由があります。

 

8月28日(日)サティ生誕150年と武満 徹 没後20年

今年生誕150周年のアニヴァーサリー・イヤーを迎えたサティのさまざまな作品と、20年前に亡くなった武満徹の歌曲を組み合わせた1日。サティは歌曲やピアノ・ソロといったよく聴くジャンルばかりでなく、ピアノ連弾から室内楽編成の音楽まで、幅広い選曲がなされています。それと何と言っても嬉しいのが出演メンバーの豪華さ。中でも世界的なサティ演奏家、高橋アキのステージは断じて聴き逃せません。

 

8月29日(月)フィレンツェの思い出/グリンカとチャイコフスキー

地理的には遠く離れたロシアにも、イタリアに強い憧れを抱いた作曲家たちはいました。とりわけチャイコフスキーは、経済的に恵まれていたこともあって、生涯に数え切れないくらい、しばしばイタリアを訪れています。一方グリンカは、20歳代後半の数年間、音楽修行を目的にイタリアで暮らしました。この日取り上げられる4曲のうち、おなじみ「アンダンテ・カンタービレ」だけはイタリアと何の関係もありませんが、グリンカの2曲はイタリア滞在中に書かれたもの、また「フィレンツェの思い出」は、少なくともタイトルがイタリアとのつながりを暗示しています。なおグリンカの「ディヴェルティメント」は、これまで日本で演奏されたことがあったかなかったか、というくらい、珍しい選曲だと思います。

 

8月30日(火)クロージング・コンサート//ブラームスのイタリア(Ⅱ)

クロージング・コンサートは再びブラームスが主役。クラリネット三重奏曲と弦楽六重奏曲第1番という、渋くもロマンティックな名作のほか、ほとんど聴く機会のないオルガン曲が2曲、取り上げられます。イタリアの作品も2曲。このうちプッチーニの「菊の花」は、小品ながらオペラ「マノン・レスコー」の終幕にも流用された哀切な楽想が限りなく美しい、まことにチャーミングな音楽です。それをパノハ四重奏団の演奏で聴けるとは!

 

(企画委員:大木正純)

 

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