これを読むと聴きに行きたくなる!あなたの耳と脳を刺激する今年のコンサートのおすすめポイント。
8月22日(木)
シューベルトとピアノ/シューベルト:ピアノ三重奏曲 作品100
高橋アキは現代音楽のピアニストとして有名で、最新版の録音では、モートン・フェルドマンの『バニータ・マーカス』を世に出したばかり。多くの人は、現代作曲家フェルドマンとロマン派作曲家シューベルトが繋がっているという事に気づいていないが、二人の作品には共通したゆっくり時間が流れる特別な雰囲気に浸りたいと聴衆に思わせる作風があります。また、シューベルトのピアノ三重奏曲は延々と続くようなテーマが繰り返し出てくる。それが、いかにもシューベルトの音楽らしく、好きな人にとってはその旋律が忘れられない懐かしい味を持って心に染みます。
ピアノ作品を演奏する高橋アキは若き学生の頃シューベルトのピアノ曲を研究し『レコード芸術』にも論文を執筆したほど。今回のプログラムではシューベルトの遺作ソナタの変ロ長調の他、比較的知られていない、でも美しいメロディーを持つ、グラーツ幻想曲とヒュッテンブレンナーの変奏曲をプログラムに組み込みたかったので、ピアニストは彼女以外に考えられず・・・・・・。彼女の音楽の中にある「優しさ」がそこに乗り、草津のコンサートホールに響くシューベルトが、その場にいる人々に時間を忘れさせることは間違いないでしょう。
そしてトリオでは、シューベルトが生まれ学んだウィーンの仲間、マルクス・ヴォルフと、タマーシュ・ヴァルガが加わりさらにシューベルトの世界へ聴衆を導いてくれることでしょう。
文・井阪 紘(草津アカデミー事務局長/レコード・プロデューサー)