ブルーノ・カニーノ ピアノ・リサイタル/シューベルト:遺作ソナタ
カニーノさんのリサイタルは、バロックから現代まで時代を超えた作品が同時に聴ける楽しみがあります。今回のリサイタルin草津音楽祭では、シューベルトの遺作のピアノソナタ第21番に始まり、休憩後にベートーヴェンの「月光」を聴いて、メンデルスゾーン、バッハに、クルタークやメシアンといった20世紀の音楽まで、実に多様なプログラムでした。ピアノの曲であればなんでも弾けるということですね。ピアニストさんによれば、前プロにシューベルトの遺作を持ってくる時点で常人を突き抜けてるプログラミングだとか。カニーノさんの演奏には一貫して作為が全くみられない自然さがあり、それ故によりその音楽の持つ本質が浮き出てくると言えます。シューベルトもメシアンも全く迷いがなく、自在に鍵盤上で指が踊り、美しく舞台を去っていくバレエダンサーのような指裁きから放たれるサウンドはいつ聴いても心地よい。
どの曲をアップしようかと迷いましたが、幻想曲風というタイトルこそは付けられているものの、情感に溺れることなく絶対音楽であるソナタとしても聞かせてくれたベートーヴェン「月光」を選びました。(MY)